FAQ3 WoCBA-RA患者さんの薬物療法をどのように選択するか?
- 妊娠を希望する場合も、寛解・低疾患活動性への導入を優先し、疾患活動性が安定した状態で妊娠中に使用可能な薬剤に切り替える。
リウマチ治療薬の選択(図)
リウマチ治療薬には、妊娠中の使用が認められていない薬剤があることから、薬剤ごとに必要とされたウォッシュアウト期間に基づいて、妊活を開始する前に投与を中止する1)。RA患者さんの疾患活動性が高い場合は、まずそのコントロールが優先されることから、アンカードラッグとなるリウマチ治療薬などにより寛解・低疾患活動性の導入が得られた後、妊娠中の安全性が認められている薬剤に切り替える。
生物学的製剤のうち、TNF阻害薬は、妊娠中期(第2期)までは、継続して使用可能であることが広く合意されており2)、後期についてはリスクベネフィットを評価したうえで使用することが可能である。妊娠時に使用する場合、特に妊娠後期は、胎盤通過性の少ない製剤が望ましい2)。
(治療薬の切り替えについては FAQ7参照)
図 妊娠経過と使用可能な時期
妊娠中の薬剤選択にあたっては、妊娠の時期によってリスクを「催奇形性」と「胎児毒性」に分けて考える。
- 妊娠~4週ごろまで:All or noneの時期
影響が大きければ流産、小さければ修復。形態異常の可能性はないと考えられている - 妊娠4~11週*ごろ:催奇形性に注意しなければならない時期
骨格や器官ができる時期- *10~11週は小さい形態異常の可能性
- 妊娠12週以降:胎児毒性に注意しなければならない時期
胎盤を移行する低分子化合物やIgG製剤は高濃度で移行する
村島温子: 周産期医学 2020; 50(増刊号): 2-5より作成
妊娠中に使用可能な薬剤についての詳細は、「全身性エリテマトーデス(SLE)、関節リウマチ(RA)、若年性特発性関節炎(JIA)や炎症性腸疾患(IBD)罹患女性患者の妊娠、出産を考えた治療指針」内の”妊娠中の薬剤、授乳中の薬剤”や、「日本リウマチ学会(https://www.ryumachi-jp.com/)>メディカルスタッフのみなさま>メディカルスタッフのためのライフステージに応じた関節リウマチ患者支援ガイド」内の”第2部Ⅱ. 妊娠・出産・授乳期”において確認できる。
ステロイド(グルココルチコイド)の減量・中止について
ステロイド(グルココルチコイド)は合併症などの観点から、早期のRA患者さんで少量かつ短期間の使用にとどめ、抗リウマチ薬の効果が認められた時点で減量し、可能な限り中止することが推奨されている3)。しかし、プレコンセプション期、妊娠中に生物学的製剤によっても痛みが十分にコントロールできない場合は、胎盤移行率が少ないプレドニゾロンの使用が推奨され4)、その場合も低用量(数mg/日)での使用が望ましい4)。
計画外の(偶発的な)妊娠について
妊娠中禁忌の薬剤を使用中に、計画外の(偶発的な)妊娠を認めた場合は、直ちにその薬剤を中止し、産婦人科と情報共有する。なお、妊娠中に使用禁忌の薬剤を服用していた場合も、妊娠初期であれば影響が少ない場合もあるので5)、安易な人工妊娠中絶の選択は避け、これらの情報を患者さんにも伝え、産婦人科医とも情報を共有し、妊娠を維持するかどうか患者さんの希望を確認する。
(計画外の(偶発的な)妊娠についてはFAQ4参照)
なお、判断に迷う場合は、妊娠と薬情報センター*に相談することも可能であることを紹介する。
- 1)全身性エリテマトーデス(SLE)、関節リウマチ(RA)、 若年性特発性関節炎(JIA)や炎症性腸疾患(IBD)罹患女性患者の妊娠、出産を考えた治療指針
- 2)Sammaritano LR et al: Arthritis Rheumatol 2020;72:529-556
- 3)関節リウマチ診療ガイドライン2020 :日本リウマチ学会
- 4)金子 佳代子:Hospitalist 2021;9:115-131
- 5)Weber-Schoendorfer C et al: Arthritis Rheum 2014; 65:1101-1110
JP-N-DA-RH-2200109