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WoCBA-RA患者の診断

リウマチ治療医によるアセスメント(FAQ1/2)

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FAQ1 WoCBA-RA患者さんの診断時に、
リウマチ治療医はどのようなアセスメントを行うべきか?

  • 一般的なRAの診断に加えて、妊娠に関連する併存疾患・リスク因子などのアセスメントを行うことを推奨する。

WoCBA-RA患者さんの初期診断

WoCBA-RA患者さんに対するリプロダクティブ・ヘルスケアの重要性が提唱されてきた。10歳代後半~40歳代の女性RA患者さんでは、偶発的な妊娠も含め、すべての患者さんに妊娠の可能性があることを前提としたアセスメントを行うことが望ましい。
そのため、一般的なRAの診断に加えて、家族計画を含むライフプランのヒアリング、妊娠に関連する併存疾患・リスク因子などの確認などを行うことが推奨される1)。また、妊娠中の放射線検査は控えたいので、初期診断時(妊娠前)に単純レントゲンによる関節評価などを実施することが望ましい。
疾患活動性については、妊娠が血沈に影響を及ぼすことから、妊娠後は血沈を用いない指標(CDAIなど)が推奨される2)。そのため、診断初期からその点を踏まえたアセスメントを検討する。

併存疾患/既往歴の確認

糖尿病や高血圧症、甲状腺疾患などの併存疾患は妊娠におけるリスク因子となることから、初期診断時に問診表などで既往歴を確認する1)
また、一部の抗リウマチ薬や生物学的製剤などの使用中は生ワクチンの接種が出来ないため、予防接種(風疹)の状況や、などについても確認することが望ましい1,3)

  • 1)Briggs AM et al: BMJ Open 2016;6:e012139
  • 2)Carlin A et al: Best Pract Res Clin Obstet Gynaecol 2008; 22: 801-823
  • 3)リウマトレックス添付文書

FAQ2 WoCBA-RA患者さんの診断時に、
リウマチ治療医はどのようなコミュニケーションが必要か?

  • 薬物療法の開始前に、家族計画(妊娠希望の有無)についての確認を行うことを推奨する。
  • 妊娠を希望する場合は「計画的に妊娠することの大切さ」を啓発する。

家族計画のヒアリング

RA治療では、患者さんのライフプランに基づいて、患者と治療目標を共有する「シェアード・ディシジョン・メーキング(SDM)」の考え方が普及してきた。そのために、患者さんの家族計画を含めたライフプランについてヒアリングすることが望ましい。
一方で、WoCBA-RA患者さんに対して、リウマチ治療医が診断初期に家族計画についてヒアリングを行うことは難しい場合もある。しかし、抗リウマチ薬(MTX)など、妊娠時の使用を回避すべき薬剤があることから、治療開始前に家族計画をヒアリングし、患者さんに必要な情報を提供することは、適切な治療計画を立てるうえでも重要になる。実際に日本における自己免疫疾患患者さんの調査ではRA患者さんの計画妊娠は52.5%であり、約半数の患者さんが計画外の(偶発的な)妊娠であることが報告されているため、適切なヘルスケアマネジメントが求められる1)
そのため、WoCBA-RA患者さんに対しては、家族計画に関する項目を加えた問診票などを用いて、必要に応じて問診時に確認することが推奨される。

妊娠希望がある場合の対応

WoCBA-RA患者さんのリプロダクティブ・ヘルスケアでは、近年の治療の進歩により、疾患が十分にコントロールされている場合には、安全な妊娠が可能であるという認識が確立してきた2, 3)。実際に、RA女性の妊娠管理において、血液検査・抗体検査を含む診断パス、抗リウマチ薬の選択などの治療パス、出産前の1回以上のリウマチ治療医の診断からなるフォローアップパスなどのクリニカルパスを遵守することで、早産や低出生体重児などの妊娠中の有害事象リスクが改善され、一般集団と同程度まで回復することが報告されている4)
そのため、WoCBA-RA患者さんに対して、

  • RA患者さんには安全な妊娠が可能であること
  • 計画的にRAの治療と妊娠の準備を行うことの大切さ

を伝えていくことが求められる5, 6)

妊娠に及ぼす年齢の影響

妊娠の確率は年齢が大きく影響することから、年齢を踏まえたライフプランを患者さんに考えてもらうことが大切となる。特にRA患者さんでは、非RA患者さんに比べて出産時の年齢が高い傾向があることから7)、妊娠活動を適切な時期に開始できるように話し合う(年齢と妊娠の関係は FAQ4参照)。
そのうえで、産婦人科医と共同してプレコンセプションケアのプログラムを開始することが望ましい。

RAの疾患活動性を抑えることの大切さ

WoCBA-RA患者さんでは、疾患活動性が高いと妊娠までの期間延長や妊孕性の低下につながること6, 8)、WoCBA-RA患者さんの妊娠第3期(妊娠28週以降)の疾患活動性が、新生児の低出生体重の独立したリスク因子であることが報告されている9)。日本のMaternal Fetal Intensive Care Unit(MFICU)を対象とした調査でも、RA患者さんでは一般人口と比較して早産(27.5 vs. 5.6%,p<.001)、低出生体重(51.6 vs. 9.5%,p<.001)の頻度が高かった1)
一方、RAの疾患活動性が寛解状態であれば、不妊症のリスクは上昇せず、さまざまな妊娠合併症についても上昇しないことが示されている9, 10)
したがって、WoCBA-RA患者さんには、寛解・低疾患活動性を達成・維持した後に妊娠を計画することが重要となる。そのためには、妊活開始するまでは、適切な避妊を行うことが大切であることを、早期から啓発する。

産婦人科医へのコンサルト

WoCBA-RA患者さんのライフプランを考えるうえで、患者さん自身が自分の体の特徴を知り、自分に適した治療目標を理解し、納得したうえで治療に参加することが求められる。しかし、家族計画に関する踏み込んだ指導はリウマチ治療医には負担が大きく、海外の調査でも産婦人科医による対応を希望していた11)
したがって、妊娠・出産の希望の有無にかかわらず産婦人科医へ受診し、妊娠に必要な準備や、避妊の大切さなどの説明を受けることが患者さんにとっても必要となる。
特に、すぐに妊娠を希望していない場合は、患者さんが産婦人科を受診する必要性を認識しにくいため、産婦人科医では避妊指導だけでなく、月経不順や月経痛、月経前症候群 (PMS)など、幅広く相談することができることをリウマチ治療医から患者さんに伝え、受診を促す。
そのためには、産婦人科医と連携のもとに、患者さんのヘルスケアを進めていくことが望ましいが5)、リウマチ治療医と産婦人科医の連携が確立している場合は限られているというのが実情である。そこで、地域での連携や、RAを含むリウマチ性疾患の女性患者さんを受け入れる産婦人科医の地域でのネットワーク構築を推進していくことが求められる。現在、母性内科学会を中心に、WoCBA-RA患者さんのプレコンセプションケアを受け入れ可能な施設一覧の作成を進めている。

  • 1)Tsuda S et al: Mod Rheumatol 2020; 30: 852-861
  • 2)Miedany YE et al: Clin Rheumatol 2020;39:3593-3601
  • 3)Al-Emadi S et al: Clin Rheumatol 2016; 35:25–31
  • 4)Bortoluzzi A et al:Arthritis Care Res 2021;73:166-172
  • 5)Briggs AM et al: BMJ Open 2016;6:e012139
  • 6)Ince-Askan H et al: Best Pract Res Clin Rheum 2015;29:580-96
  • 7)Kishore S et al: Semin Arthritis Rheum 2019;49:236-240
  • 8)Brouwer J et al:Ann Rheum Dis 2015;74:1836-41
  • 9)de Man YA et al: Arthritis Rheum 2009;11:3196-3206
  • 10)Bharti B et al: J Rheum 2015;42:1376-1382
  • 11)Talabi MB et al: Arthritis Care Res 2020;72:452-458

JP-N-DA-RH-2200109