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関節リウマチと妊孕性

関節リウマチによる妊孕性への影響に不安を持つ患者さんは少なくないと思われますが、疾患活動性が低い状態で妊娠して薬物療法を制限できれば、疾患が児の先天異常に影響しないことが報告されており、早くから妊娠・出産を視野に入れた治療が望まれます。

関節リウマチが妊孕性や妊娠転帰に与える影響

疾患が妊孕率や妊娠転帰に影響するのではないかと不安を抱いている関節リウマチ患者さんは少なくないと思われますが、実際はどうなのでしょうか。
2002年5月~2008年8月、妊娠計画中または妊娠早期の関節リウマチ女性245例を対象として妊孕性低下に関連する要因を検討する大規模前向きコホート研究「the Pregnancy-induced Amelioration of Rheumatoid Arthritis(PARA)study」がオランダで実施されました。
妊娠計画から1年以内に妊娠できなかった患者さんの頻度を疾患活動性で層別化して比較したところ、高疾患活動性群(DAS28>5.1)は67%、中等度疾患活動性群(3.2 < DAS28≤5.1)は43%、低疾患活動性群(2.6 < DAS28≤3.2)は 37%、寛解群(DAS28≤2.6)は30%でした(図11)。同研究では、DAS28高値のほかに、年齢、未経産、ステロイド(Prednisone > 7.5mg/日)使用、NSAIDs使用が、妊孕性低下と関連すると報告されました1)

※国内未承認

図1 疾患活動性と妊孕性(PARA Study:海外データ)

疾患活動性と妊孕性

対象・方法
女性関節リウマチ患者において妊娠までの期間(TTP)に影響を与える臨床的要因を明らかにすることを目的に行ったオランダのコホートスタディ(PARA study)。2002年から2008年の間に妊娠希望または妊娠初期の患者245例を組み入れた。患者への妊孕性に影響している可能性のある要因(年齢、出産歴、喫煙習慣など)についての質問、疾患活動性の評価、抗リウマチ薬使用の頻度や用量の記録を行い、疾患活動性、治療歴と妊孕性低下の関連を前向きに調査した。
Reproduced from Ann Rheum Dis, Brouwer J, et al., 74(10), 1836-1841, 2015, with permission from BMJ Publishing Group Ltd.
妊娠中の影響に関しては、関節リウマチの疾患活動性が高いことが早産2)や児の出生時体重低下3)の独立したリスクとなるとの報告があり、妊娠中も良好な疾患コントロールが求められます。疾患活動性が低い状態で妊娠し、薬物療法も制限できていれば、妊娠経過は非関節リウマチ女性と変わらず、疾患自体が児の先天異常に関連がないと認識されています4、5)
以上より、WoCBAの関節リウマチでは早くから妊娠・出産の計画を視野に入れて低疾患活動性~寛解の達成・維持を目指すことが望ましいといえます。
妊孕性低下の要因1)女性
  • 加齢
  • 未経産
  • 高疾患活動性
  • ステロイド
    (Prednisone > 7.5mg/日)使用
  • NSAIDs使用
  • ※国内未承認

妊娠が関節リウマチに与える影響

関節リウマチでは妊娠中に関節症状が改善し、分娩後に再燃する傾向があります。国内外の疫学研究を見ると、妊娠中に関節症状が改善した患者さんおよび分娩後に再燃した患者さんの割合は、ともに40~90%と報告されています(表)6)
妊娠中に関節リウマチ症状が改善する予測因子は、妊娠時の疾患活動性(寛解あるいは低疾患活動性)、リウマトイド因子(RF)陰性、抗CCP抗体陰性で、罹病期間や関節機能は予測因子になりませんでした。また、妊娠時の低疾患活動性は、出産後の再燃リスク低下にも関連していました7)

表 関節リウマチ女性における妊娠中の症状改善と分娩後の再燃

症状改善と分娩後データ
舟久保ゆう: Jpn J Clin Immunol. 2015; 38(1): 45-56..

妊娠中に関節炎が軽快して分娩後に再燃するメカニズムについては、まだ十分に解明されていませんが、血中サイトカイン濃度との関連について、次のような報告があります。

関節リウマチではTh1/Th2バランスがTh1優位に傾いているが、妊娠中はTh2優位となり関節リウマチの活動性が低下する8)

妊娠中は制御性T細胞が増加し、抗炎症性サイトカインであるIL-10産生が増加、炎症性サイトカインであるTNF-α、IFN-γ産生が減少する9、10)

  • 1)Brouwer J et al.: Ann Rheum Dis. 2015; 74(10): 1836-1841.
  • 2)Zbinden A et al.: Rheumatology(Oxford). 2018; 57(10): 1235-1242.
  • 3)de Man YA et al.: Arthritis Rheum. 2009; 60(11): 3196-3206.
  • 4)Norgaard M et al.: J Intern Med. 2010; 268(4): 329-337.
  • 5)Wallenious M et al.: Arthritis Rheum. 2011; 63(6):1534-1542.
  • 6)舟久保ゆう: Jpn J Clin Immunol. 2015; 38(1): 45-56.
  • 7)Förger F et al.: Swiss Med Wkly. 2012; 142: w13644.
  • 8)Russell A.S et al.: J Rheumatol. 1997; 24(6): 1045-1050.
  • 9)Forger F et al.: Ann Rheum Dis. 2008; 67(7): 984-990.
  • 10)Somerset DA et al.: Immunology. 2004; 112(1): 38-43.

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