診断時に確認すべきポイント
関節リウマチでは、妊娠・出産する可能性のあるすべての男女を対象とした「プレコンセプションケア」が望まれます。プレコンセプションケアの実践、関節リウマチの診断にあたっては、チェックリストを活用するなどしての幅広い情報収集が望まれます。
プレコンセプションケア
将来妊娠・出産する可能性のあるすべての女性とそのパートナーを対象とした包括的なケアを「プレコンセプションケア」といい、世界保健機関(WHO)などにより提唱されています。プレコンセプションケアでは、不妊要因や関節リウマチの悪化要因を取り除き、妊娠時の体調や薬剤使用の影響を考慮した治療計画を立てるための情報収集が欠かせません1,2)。したがって、早い段階で、患者さんやご家族としっかりコミュニケーションを取りながら、より幅広い情報を得ることが求められます(表1)。
表1 プレコンセプションケアに求められる情報
監修:国立成育医療研究センター 周産期・母性診療センター 主任副センター長/妊娠と薬情報センター センター長
村島 温子先生
診断の進め方
WoCBA関節リウマチ患者さんの診断にあたっては、挙児希望の有無など、妊娠・出産に関連する情報の取得が重要となります。挙児希望があれば、現在の疾患の状態やリスクファクターの評価などを行い、治療法を決定していきます(図)3)。一方で、挙児希望がない場合でも、妊娠と薬剤リスクの関連や避妊についての説明を行う必要があります(表2)。妊娠を容認できる状態にあるかを判断するチェックリストも提唱されています4)。
図 関節リウマチ患者の妊娠計画
Reprinted by permission from Springer: Springer Nature, Irish Journal of Medical Science, A multidisciplinary approach to reproductive healthcare in women with rheumatic disease, Murray K et al., ©2020
表2 妊娠希望者・妊産婦・授乳婦の抗リウマチ薬の安全性と使用の可否
監修:国立成育医療研究センター 周産期・母性診療センター 主任副センター長/妊娠と薬情報センター センター長
村島 温子先生
各種抗体検査
関節リウマチではリウマトイド因子(rheumatoid factor: RF)や抗CCP抗体などが疾患活動性の指標として重要ですが、WoCBAの場合は抗甲状腺抗体などの各種抗体検査を併せて行うことが勧められます。ただし、抗SS-A抗体および抗リン脂質抗体については、これらの抗体によるリスクが最新の測定法でキャリブレーションできていないこと、また、そもそもこれらの抗体の陽性率が低い関節リウマチでは測定すべきか否か意見が分かれています。
甲状腺機能
橋本病の体質をもつ女性は稀ではありません。妊活中の女性では甲状腺機能を測定することも考慮してください。
- 1)荒田尚子: 産婦人科の実際 2019; 68(10): 1261-1267.
- 2)金子佳代子: リウマチ科 2020; 64(1): 76-81.
- 3)Murray K et al.: Ir J Med Sci. 2020(1); 189: 237-243.
- 4)厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患等政策研究事業(難治性疾患政策研究事業): 「関節リウマチ(RA)や炎症性腸疾患(IBD)罹患女性患者の妊娠、出産を考えた治療指針の作成」 研究班: 全身性エリテマトーデス(SLE)、関節リウマチ(RA)、若年性特発性関節炎(JIA)や炎症性腸疾患(IBD)罹患女性患者の妊娠、出産を考えた治療指針, 平成30年(2018年)3月 https://ra-ibd-sle-pregnancy.org/data/sisin201803.pdf
JP-N-CZ-RA-2100127